Review 令和X年のハムレット

《令和X年のハムレットにいただきましたご感想》

●北村紗衣様Commentarius Saevus
オフィーリアを死なせない~『令和X年のハムレット』 – Commentarius Saevus (hatenablog.com)

●高野しのぶ様しのぶの演劇レビュー
【2021年10月の気になる舞台】 – しのぶの演劇レビュー (shinobutakano.com)

⚫︎史穂理様・俳優・臨床心理士
俳優たちに台本を持たせる演出意図はなんなのだろう…と思い巡らせながら鑑賞していたのですが、「自分で決めて!」とオフィーリアが台本を天に向かって放り出した時に1つの解を得たような気持ちになりました。 この作品の中で俳優たちが手にしている「台本」は、”過去の物語(原作)”を語る役割も果たしていますが、同時に、”人間が演じることを前提に他者が書いた物語”という台本そのものの定義が思い起こされると、本作に込められたメッセージが、より迫り来るのではないでしょうか。 つまり「台本」とは、社会通念であったり、偏見だったり、ジェンダーステレオタイプだったり…そういう、私たちの声をかき消し、私たちの物語を私たちの物語にしないために働く”過去の物語”や”他人が書いた物語”を表すモチーフなのだと思うのです。 「台本を持たされている人たち」「台本がないと生きられない人たち」「台本を離せない人たち」「台本を離さない人たち」… 「台本」に囚われている限り、生身の人間として自己をこの世界に開いていくのは、非常に困難なことと思います。 過去の物語や自分を抑圧してくる通念に自己決定を任さず”自分で選び”、そして”自分の名前は手放すものか”とオフィーリアのように声を上げる。それが、令和と呼ばれる現代であってもいかに難しいことか…。 でも、私は舞台の上で旅立つ覚悟をしたオフィーリアに励まされました。”私たちは、自分で選び、進むことができるのだ!”と。 この他にも、カメラワーク、照明、衣装、舞台装置、どれも素晴らしく、オンライン視聴の可能性を感じてワクワクしました。 俳優の表情がしっかり観れたことはもちろん、ドローンのおかげで舞台全体を奥行きをもって味わえたのは贅沢な体験でした。令和の演劇も、良いですね。きっと、シェイクスピアも空の上で目を丸くしているのではないでしょうか。

樋口一様・ラジオパーソナリティ
配信で観劇させて頂きました。
映像がすごく良かった!
話は、若い頃はオフィーリアに共感してたと思うけど、
王妃の悲哀の方に感情移入しました。
大小あれど、今までのやり方で我慢して生きてきた女性にとっては、複雑な世の中よねーと。
そういう感情を成仏させるにもこういう演劇って必要よねと思いました。

こまつとしかず様・予告編制作
映画監督や脚本家や小説家達は、なんて残酷で自分勝手で無責任な人達なんだろうと思うことがあります。勝手に人物を創り出して不幸な運命を背負わせてさんざん辛い思いをさせておいて、最後にはあっさり殺してしまう。或いはちょっとだけ希望のありそうな匂いをさせておしまい。いったい自分を何様だと思っているのか?と。 そして、作家たる者人の幸不幸を好き勝手にして良いのだという前例を作ったのがシェークスピアではないかと思うのです。 「令和X年のハムレット」は、そんな思い上がった大作家への、登場人物達による反逆でしょうか。いつかこんな日が来るだろうとは思っていたのですが、それがもっとも知られた作品であるハムレットで起こるとは意外でもあり痛快でもありました。 ちなみに僕は昨年、誰も死なないロミオとジュリエットのマンガをフェイスブックに描きました。これも傲慢な大作家への小さな反抗でしたが、何故かその後、シェークスピアへの興味が増してしまいました。結局、自分もこの大作家の登場人物のひとりにすぎないのでしょうか。

水村美咲様・俳優
「ハムレット」視聴させて頂きました❣️ すごく面白くて親しみのあるハムレットで、楽しませて頂きました✨ ハムレットとはどこか遠くにいる架空の人物だと思っていましたが、今作のハムレットは生々しく人間味があって親近感を感じてしまいました☺️ 衣装も素敵で、見応えがありました! 台本を持っているものの、それぞれの小道具の1つのように馴染んで見えたのも面白かったです! あと、カメラ何台使っているんだ、、、!!!という驚きでした。 正面から撮影した平面のみの情報だけでなく、舞台が立体的に見えて私も舞台に立っているのではないかという、配信でしか味わえない臨場感も楽しかったです!

大山鎬則様・劇団シグナルズ主宰
ハムレットは昔、渡辺謙さんとか、遊眠社の上杉さんのバージョンを見たことがあって、内容は大体覚えてましたので、最初に出てきた2人がローゼンクランツとギルデンスターンだなと言うのは分かったりしました
最初の方は1部書き換えられているものの、予想よりは通常のハムレットで、どうなるのかなと思っていたのですが、オフィーリアが車椅子の父親になじられるシーンくらいから、作品の本筋が見えてきたような気がしました
いよいよ最後、オフィーリアが反抗して、喋りだし、外へと出ていくクライマックスは
、カタルシスたっぷりでよかったです!
女性も当たり前に物言うぞ!
と言う、当たり前が実現されていて
最後舞台に残ったのも、女性であるガートルードであるところも、意味があるのかなと思ったり吉村さんの意図が感じられるハムレットでよかったです!

A.O様・俳優
滑り込みでハムレット配信で見ました。ゲキシネの映像クオリティですね!
最後に吉祥寺シアターの外で車が通っていたりするところが、一気に現実と繋がって面白かったです。吉祥寺シアターならではの使い方ですね。
オフィーリアはいいけど、ガートルードかわいそう。。尼寺へ行けって言われて。
そもそも、ハムレットが出家しろよって。

大原とき緒様・映画作家
配信、すごく面白かったです!
最後、タクシーが偶然、通るところ、効いてましたね。『江の島行』よりも、映像がすごく面白かったです。前は舞台の補足のような位置づけに感じていましたが、これは、劇場で観た人と違うものになっていると思いました。
元希さんの戯曲の言葉が達者な俳優たちによって、生きた言葉になっていて、感動しました。
ハムレットの物語から、終盤、女性たちの物語になっていくところが本当に良かったです。

石津文子様・映画評論家
土曜日は吉村元希さん脚本・演出の「令和X年のハムレット」@吉祥寺シアターへ。先王以外、誰も死なないハムレット。もちろんオフィーリアも死なない。そして、オフィーリアはハムレットに恋してもいない!これが令和X年という気がする。今までもハムレットはとんだ勘違い野郎だった可能性は大なんだけど(そもそも亡霊の話を鵜呑みにするし)、それを全面に押し出していて面白い。フェミニズム視点で翻案しつつも基本は喜劇なのが良かった。オフィーリアが自分で選択していくのに対して、ガートルードは人頼み、そして平成中村座を思わせる終わり方。配信は23日まで。

元ハマっ子様・元ハマっ子🐌✨さん (@yaseppochineko) / Twitter
吉祥寺シアターで戯曲組リーディング公演「令和X年のハムレット」を鑑賞。
家族、生い立ち、延いては世の中のせいにして、困難から目を背け逃げる生き方を葬り去る。
自分自身なかなかやれなかったことだけど、これから少しでも目指そうと勇気を貰えた。

武田知愛様・脚本家(チュープロ)
先日配信で観劇。オフィーリアの死から想起した本作品は時空の歪みの中から、本当に生きているのか、と私たちに問いかける。シンプルで美しい舞台、深い青と闇、ドローンの唸り声、そして女王の美しい涙。朗読劇の既存のイメージを超える新しい表現の可能性を感じた。配信は23日まで。皆さまぜひ。

吉田昌美様・俳優
私が1番に感じたのは演出のセンスの良さでしょうか。
そしてこれはよかったが故のことですが、ここまで作るなら、朗読劇の形式が良かったのかという疑問はありました。が、ハムレットという堅い時代の形式ばった物語と朗読という束縛は合っているようにも思いました。
私は今の若者は、男性の方が生きにくいかもしれないと思っているところはあるのですが、
今年は森発言に始まるジェンダー議論が起こったので、そこは提示しやすい問題であったと思います。

映画畑の人が演劇やると、なんか違っちゃうことが多々あるけど、今回は、むしろ、スタッフワークがしっかりしてるといういい面が全体に出ていて、丁寧なな仕事を見させてもらいました。

小春様・俳優
戯曲組の吉村元希さんの作・演出による『令和X年のハムレット』の生配信視聴させて頂きました!

シェイクスピアをこんな形にお料理してしまう元希さんの繊細かつ大胆な視点にもう目の離せないハムレットがありました。

自らの意思で物語りの外に歩いていくオフェーリアの背中を私も一緒になって押していました。

作中のオフェーリアのような女性が増えていくことを願い、また期待しながら令和X年のハムレットを存分に楽しませて頂きました。

生の舞台を拝観できなかったのは残念でしたが、なんとこちらの作品、2台のクレーンやドローンまで使っての舞台となっているので、本当に見応えある作品です。

意外性に驚きながらすごく楽しませて頂きました。お薦めの作品です。今月23日までご覧になれますよ♬
ますます元希さんが作り出す世界にはまります😊

木下竜様・株式会社利助オフィス所属のプロデューサー。
【大推薦!】老朋友の吉村元希率いる「戯曲組」の新作『令和X年のハムレット』の生配信を見ました。
「令和X年」というところがミソで、あまりにも有名な悲劇を、彼女独特の視点で解体・再構築(一応喜劇仕立てです)。男性中心に作られてきた日本の社会構造を撃つ挑発的な舞台になっていました。
本舞台は、戯曲組がコロナ禍で実験的に続けていたZOOMによる戯曲の朗読の方法論がベースになっていて(たぶん)、舞台でもみんなずっと台本を持ってやってるところが一種の異化効果になっています。これを踏まえて、終盤でオフィーリアが取る行動がなんともスリリング。
配信では、クレーン2台を含む4台のカメラ!とドローンを使った撮影が見もの。おそらく事前に大枠は決めていただろうとは言え、相当大変だったに違いない。映画畑の監督なので、構図作りにも抜かりが無く、ドローンの使い方も実に効果的。とにもかくにも役者がみんな良かったです。23日(土)まで配信があるので、芝居好きの方も、映画好きの方も、興味を持った方はぜひ。お代分の価値十分ありです。

木下竜様・株式会社利助オフィス所属のプロデューサー。かつて映画輸入会社に勤務したこともある映画愛好家。各種広報業務の傍ら、2014年には福岡に「爆音映画祭」を持ち込み、以降博多の映画ファンにはおなじみのイベントに。2020年8月、福岡アートミュージアムパートナーズとの共催で「FAMシネマテーク」をスタート。

⇒吉村からのお返事

竜君、ありがとう!そこを見て欲しいと思うところを見てくださっていて嬉しいです。映画にうるさい竜君に映像を褒められると嬉しいです。
映像は川上ルイベさん率いる配信チームのおかげです。

これからもよろしくね。

ヤジマチ様
すごく面白かったです!
オープニングと後半の全員での言葉の掛け合いはエヴァのシーンを連想し、脚本家の世代を感じました。
特に後半のそれはコロナ時代の陰鬱とした猜疑心を告発していて吹きながら共感しました。

芝居、舞台、空間、役者、役柄、時代、国、場所、が仮想と現実の間を行き来し、作り手の脳内とハムレットの脳内と観客の脳内が入れ子状に交差し、その螺旋状の世界をオフィーリアが段階的に上り詰め、自由に羽ばたく。といういわばメタ芝居を使ったオフィーリアの成長物語に感じました。
綾波レイが人形から少しずつ成長していくように。

芝居を観ているうち私も一緒に解放されるのを感じながら、
あ、私もこの一年半、囚われていたんだ
そしてもう何も信じられなくなっていたんだ
と内観しました
オフィーリアありがとう

黒塗りの赤木ファイルと一緒に封印されていたんだ真心は!
「恋人じゃないけど異性の共謀者」と高跳びしていいんだ!
噂するなら勝手にしろ!危険な結婚という切り札を使ってでも足かせを外せマコちゃん!
とか台詞に脳内がユニゾンしてました
吉村さんありがとう

脚本がこれからも厚みを増していきそうなのでブラッシュアップした次なる公演を観たいと強く思いました。

⇒吉村からのお返事
実はそうです、庵野秀明監督とは近い世代です。同じ時代を生きている人間の共通項はあるかもしれません。

たくさんのことを読み取ってくださってありがとうございます。

はい、これからも頑張ります。

吉良佳奈江様・翻訳家
オフィーリアが死なないハムレットよかったです。令和3年に、すごくリアルタイム感がありました。
誰だって好きな人と結婚できたらいいのに。できないのおかしいよね、って思いました。

吉村からのお返事
そうですよね、女性の登場人物が可哀想に死ぬのがドラマであってはならないと最近思いました。

結婚騒動、世間を騒がせていますね。

河田剛様・グルメアナリスト
ハムレットの劇世界はハムレットの妄想なのか、幾つか平行した世界が存在したのか、
オフィーリアは無なのかそうではないのか。思考が刺激される。
初期の台本を読んでいたので、そこから演劇が立ち上がってくる様が新鮮だった。

吉村からのお返事
今私たちが生きているこの世界も、なにか現実で何が虚構なのか分からなくなるときがあります。
そんな世界を表現してみたいと思いました。

スクショ02 スクショ03 スクショ11 スクショ12_ trimming